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定置網の漁獲過程の研究

定置網は漁場に来遊する魚群の進路を遮蔽し、網の陥穽構造(かえし)を使って漁獲します。魚の来遊を待ち構えて魚を捕らえることから、その漁獲過程は極めて受動的で、対象魚群の対網行動の連鎖の結果が漁獲の成否を左右します。そのため、入網する対象魚群の行動を研究することは、対象魚の漁獲方法や稀少種の逃避を適切に行うための漁具デザインや漁法の提案に繋がる可能性があります

概 要

​受動漁具である定置網の漁獲過程の解明には入網時の魚群行動を明らかにする必要があります。ところが、対象魚群の行動を広大な定置網漁場で継続的に追跡することは極めて困難です。当研究室では、対象魚群が定置網漁場内外でどのように遊泳しているのかを調べるための計測手法を研究しています。過日には​バイオテレメトリーを使った対象魚の漁場への来遊計測をした実績 (Komeyama et al., 2008) がありますが、これは個体レベルの追跡であり魚群の追跡は難しいといった課題がありました。そこで、水産情報工学研究室・高橋准教授が確立した魚群行動シミュレーションを利用し、漁具に対する対網行動の連鎖を分析し漁獲に至るプロセスを研究しています。特に当研究室では、光学カメラによる魚群行動計測を行い対象魚の行動特性を明らかにすることで、魚群行動シミュレーションを駆動する魚群モデルを現実的なモデルに改良することを試みています。

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​魚群行動シミュレーション

定置網は大きいもので数百メートル、その垣網は数キロメートルにも及ぶほど、その漁場は広範囲にわたります。そのなかを動き回る対象魚群を、四六時中かつ詳細に追跡する技術が無いのが実情です。たとえそれが実現しても、希少種を対象とする場合は捕獲そのものが規制されていることがあり,実試験を行うことは容易ではありません。そこで、定置網漁場を仮想空間で再現し、魚群行動シミュレーションを行うことで定置網の漁獲過程を明らかにしようとしています。たとえば、陥穽構造の違いや対象魚群の行動特性が定置網の漁獲性能に及ぼす影響を評しています。魚群モデルはBoidモデルを採用し、近傍個体からの逃避,整列,凝集,網に対する行動をモデル化することでシミュレーションを実施しています。現在のところ魚群行動モデルのパラメータは試行錯誤的に決定しているため,当研究室では、リアルな魚群行動を再現するために,フィールドで魚群行動を記録しモデルの構築を目指しています。

​現実的な魚群行動モデルの構築

仮想空間における定置網に対する現実的な魚群行動シミュレーションを行うために、実測値に基づいた魚群モデルの構築にチャレンジしています。手順としては、対象種の魚群行動をしっかりと分析し、対象魚種毎に個体を駆動する遊泳速度,個体間, 網地との間で保つ距離といった、魚群行動の特徴を可視化できるようにします。そして魚群モデル(Boidモデル)の構築は,近傍個体からの逃避,整列,凝集,対網行動の情報を用いて行います。必要に応じて異なる行動要因を組み込み、魚群モデルが現実的な魚群行動を示すようにパラメータを調整していきます。

魚群行動の実測値を得るために、ダイバーが可搬し撮影できる携帯型ステレオカメラを使用したり、ICTで遠隔撮影できるカメラを使用したりして、魚群行動を撮影・分析しています。

定置網研究に関する成果

  1. Yuki Takahashi, Kazuyoshi Komeyama, Simulation of the capture process in set net fishing using a fish-schooling behavior model, Fisheries Science Vol. 86, pp971–983 (2020). https://doi.org/10.1007/s12562-020-01462-w

  2. 米山和良, 高橋勇樹, 魚群モニタリングを目的とした携帯型ステレオカメラ, 画像ラボ, Vol. 34 (4), pp23−29. (2023)

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