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光学ステレオカメラによる魚の計測

魚を対象とする漁業、養殖業の研究には、様々な場面で対象魚の魚群行動や魚体をモニターする必要性が生じます。目視、音響、バイオロギング、画像等様々なアプローチがありますが、本研究室では画像・映像を用いた計測手法を研究しています。

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​ステレオカメラによる計測

魚は水中を3次元に遊泳しているため、行動計測も3次元空間の動きがわかるようにデータを取得するべきです。たとえば養殖生簀を周回するマグロの遊泳速度を単眼カメラで計測しても、マグロの奥行き方向の位置が分からないことから、マグロが奥行き方向に移動する場合は遊泳速度は過小評価になってしまうでしょう。光学カメラひとつでは視点の異なるカメラの画像から3次元情報を復元することをステレオビジョンとよびます。光学カメラによるステレオビジョンは、それぞれのカメラ画像上の対象魚の特徴点を通過する2つのカメラ視線を使って、三角測量の原理で対象の3次元位置を計測します。カメラが固定されていれば、対象魚の3次元位置を追うことで遊泳軌跡が得られ、その遊泳軌跡を時間差分すると3次元空間で評価された遊泳速度が得られます。

アクションカメラで実装するステレオカメラ

​ステレオカメラは、使用する複数個のカメラ同士の時間が同期されていなければ複数のカメラで撮影された動画フレームから同じシーンのフレームを同定することはできず、計測対象を3次元に計測することはできません。ですから、水中のステレオカメラは2つのカメラを接続するユニットや防水加工等がコストとなり大変高価になるイメージがありますが、実は防水のアクションカメラが2つ揃えばステレオカメラは簡単に構築できます。時間の同期は音声によってカメラ同士の時間同期を行うことができ、あとは計測対象を直線と直線の交点を求める、いわば三角測量の原理で計測対象の3次元計測位置を推定できます。

多眼ステレオカメラを用いた計測の高度化

​三角測量の原理で対象を計測するステレオカメラは、カメラ間の基線長が短いと、奥行き方向に対象が遠ざかるに従い精度が低下します。養殖生簀で養成魚を計測するときは、必ずしも養成魚がステレオカメラで正確に計測できる空間を通過するとは限らないため、ステレオカメラの遠方を遊泳する個体も正確に計測できれば、より実用的です。ステレオ画像計測の奥行き方向の誤差を低減するためには、カメラ同士の光軸の距離(基線長)を広げることや、カメラの光軸を直交させて計測することで対処できます。ところが、これらの方法は、撮影に広い空間が必要です。また、広い空間になると透視度や計測装置の大きさといった運用上の問題が生じます。それゆえに現用の魚体長計測を目的とした可搬式のステレオカメラは基線長が短いタイプが多く、奥行き方向の誤差が大きくなってしまいます。このような基線長の短いステレオカメラで奥行き方向の計測誤差を低減させ、正確な計測を行うにはどうすればよいでしょうか。当研究室では通常2機のカメラで構成される2眼ステレオカメラを,4眼に拡張して、カメラの視線を増やすことで計測対象が奥行き方向に離れるに従い生じる計測のばらつきを抑える試みを行っています。2眼カメラ,3眼カメラによるステレオ画像計測よりも4眼カメラによるステレオ画像計測の精度(ばらつき),正確度(偏り)が共に大幅に改善することを確認しており、今後は魚群行動計測や魚体長計測に応用することを計画しています。

養殖魚養成モニタリングに関する成果

  1. Yuto Sasaki, Rin Nishikawa, Kazuyoshi Komeyama, Non-invasive swimming speed estimation method based on tail beat frequency determined from fish length measurement using stereo cameras, Fisheries Science (in Press)

  2. 池田龍之介,田中達也,池上温史,中村悟史 ,米山和良,音声同期手法におけるステレオ画像計測へのフレームレートおよびシャッター速の影響,水産工学,56,pp85-89 (2019). https://doi.org/10.18903/fisheng.56.2_85

  3. 田中達也, 米山和良, 山口武治, 浅海 茂, 鳥澤眞介, 髙木 力, 多眼ステレオ画像計測による養魚体測システムの精度向上 ,  日本水産学会誌,85, pp314-320 (2019). https://doi.org/10.2331/suisan.18-00034

  4. Kazuyoshi Komeyama, Jin Mugita, Osamu Tamaru, Tsutomu Takagi, Comparison of fish shoals of Japanese mackerel and Chub mackerel: Monitoring behaviour of fish schools using a stereo vision camera. Contributions on the Theory of Fishing Gears and Related Marine Systems, 10,  pp.261-269. (2017)

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